脳梗塞や脳出血についてもっと詳しく

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脳の血管が詰まったり破れたりして起こる

脳が正常に機能するためには、全身をめぐる血液の約30%の血液が必要になります。これが不足して、脳に十分な酸素が行きわたらなくなると、脳細胞は大きなダメージを受けます。
脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりして、脳細胞に十分な血液が供給されなくなってしまう病気です。脳血管の障害によって起こることから、脳血管障害とも呼ばれます。かつてはきわめて死亡率の高い病気でしたが、現在では、診断技術や治療技術の進歩によって、治癒率が大きく向上しています。ただ、日本人の死亡原因でみると、ガン、心臓病に次いで第3位に位置しているように、命を失う危険が大きく、また、命をとりとめても言語や運動機能に大きな障害が残りやすい恐ろしい病気であることは現在も変わりありません。
もっとも、ひとくちに脳卒中といっても、いくつかのタイプがあります。最も多いのは、脳の血管が詰まるために起こる脳梗塞で、脳卒中全体の70~80%を占めています。脳梗塞には、脳の血管が狭くなって起こる脳血栓と、心臓などにできた血液のかたまり(血栓)が脳に流れ込んで血管を詰まらせてしまう脳塞栓があります。
残りの脳卒中の大部分は、脳内の血管が破裂して出血する脳出血によって占められています。戦後しばらくまでは脳出血が日本人の脳卒中の大半を占めていましたが、現在では脳梗塞と立場が入れ替わっています。この二つのほかに、脳を包んでいるクモ膜と軟膜の間に出血するクモ膜下出血があります。脳卒中全体に占める割合はわずかですが、最も命を失う危険が高く、恐ろしい病気です。
なお、脳梗塞のなかには、体のマヒや言語障害といった症状があらわれても、24時間(大部分は数分)以内に治ってしまうケースがあり、このような場合を一過性脳虚血発作と呼んでいます。比較的短時間で治ってしまうため、「少し疲れているのだろう」などと見逃してしまいがちですが、そのまま治療を受けずにいれば本格的な脳梗塞に進展します。早めに治療を受けることが大切です。

心筋梗塞の1.7倍、依然として多い死亡者数

前述したように、現在、日本人の死亡原因の第1位はガン、2位が心筋梗塞などの心疾患、3位が脳卒中を含めた脳血管疾患です。この順位は、1980年代から変わっていません。ちなみに2006年の統計によれば、ガンによる死亡者は約33万人、心疾患が約17万3000人、脳血管疾患が約12万8000人となっています。
この数字だけみれば、心臓病のほうが脳卒中よりも死亡率の高い病気のように思えます。しかし、第2位の心疾患のなかには、心不全やリウマチ性心疾患など、心臓以外の病気が悪化して、最終的に心臓に致死的な障害が生じて死亡した例が、かなり含まれています。一方、脳血管疾患のほうは、そのほとんどが脳卒中で占められ、脳卒中以外の病気は約3500人でしかありません。
実質的には、脳卒中の死亡率は心筋梗塞の2倍、罹患率は3~7倍といわれていて、心臓病よりも恐ろしい病気なのです。
また、それぞれの代表的な病気をみても、罹患率で脳卒中の約4分の3を占める脳梗塞は、死亡者数でも約7万5000人と、脳卒中全体の60%強を占めています。一方、心疾患では、心筋梗塞を含めた虚血性心疾患による死亡者は約7万5000人。心筋梗塞だけに限れば約4万5000人です。この数字をみても、脳卒中がいかに怖い病気かがわかります。
ちなみに、ガンは死亡者数で心疾患や脳血管疾患を大きく引き離していますが、これはいろいろな臓器にできるガンすべてを合わせての数字です。臓器別にみれば、最も死亡者が多い肺ガンでも約6万3000人です。脳卒中は、一つの臓器に起こる病気としては、最も死亡者が多い病気といっても過言ではないのです。

タイプによって異なる発症のメカニズム

ひとくちに脳卒中といっても、血管が詰まるのか破れるのか、同じ詰まるにしてもどのように詰まるのか、などによって病気の起こり方が違います。

脳梗塞

脳梗塞の直接の引き金となるのは、脳血管の動脈硬化です。たとえば、脳の動脈に動脈硬化が起こると、血管の内腔が次第に狭くなり、ついには血管が完全にふさがって血液がそこから先に流れなくなってしまいます。その結果、そこから先にある脳細胞は酸素や栄養の供給を受けられなくなり、壊死してしまいます。これが脳血栓です。脳血栓には、こうした病的変化が細い動脈に起こるラクナ梗塞と、大きな動脈に起こるアテローム血栓性脳梗塞があります。ラクナ梗塞は高齢者や高血圧をもつ人に多く、糖尿病や高脂血症とも関連しています。一方、アテローム血栓性脳梗塞は、高血圧、糖尿病、高脂血症が重要な危険因子で、食生活など日本人の生活習慣の変化により、最近増加しています。
脳塞栓の場合は、加齢とともに心臓など脳以外の臓器に動脈硬化が起こり、その結果生じた血栓(血液のかたまり)が血液の流れに乗って脳にたどり着いて血管をふさいでしまう、というのが一般的なパターンです。最も多いのが心臓にできた血栓が原因となるケースで、心原性脳塞栓といい、心臓弁膜症や心筋梗塞、心房細動(不整脈の一種)などのために心臓の働きが低下していると、血栓ができやすくなります。特に若い人の脳梗塞は心原性脳塞栓が多いようです。動脈硬化が起きる年齢ではないのに、心臓の冠状動脈にも脳血管にも動脈硬化が見られないのに、こんな若い人がどうして?と首をかしげたくなることも多々あります。多くの場合、突発性の不整脈が血栓の原因と思われています。過労やストレス、ヒートショックなど、心血管の痙攣を起こす原因は日常に生活に潜んでいます。若いからと言って過信は禁物です。なお、細菌性心内膜炎のように、心臓に細菌の感染病巣がある場合にも、血栓ができやすくなることがあります。

脳出血

脳出血は、広い意味でいえば、頭蓋内部で起きた出血のために脳細胞が障害される病気です。したがって、くも膜下出血も脳出血に含まれますが、一般に脳出血という場合には、脳の内部に出血が起こる脳内出血のことをさします。
脳出血とは脳内の血管が何らかの原因で破れ、大脳、小脳および脳幹に出血が起きるために意識障害、運動マヒ、感覚障害などの症状があらわれます。また、出血が止まっても、出血した血液が固まって血腫ができます。それが大きくなると周囲の脳組織を圧迫して脳ヘルニアを起こし、重い場合は脳幹部が圧迫されて死に至ります。
近年、脳出血による死亡数は減ってきましたが、その最大の理由は高血圧の薬物療法が進歩し、血圧のコントロールが十分に行なわれるようになったためです。なお、最近は、脳出血を起こしても軽症ですむケースが増えていますが、それでも運動障害や認知症などの後遺症で悩む患者さんが多いのも事実です。
脳出血の最大の原因は高血圧で、脳出血全体の約70%を占めています。ただ、高血圧だけが原因となるわけではなく、動脈硬化や加齢によって血管がもろくなることも、脳出血を引き起こす大きな要因です。また、出血をともなう病気があったり、血液をかたまりにくくする抗凝固剤を服用している場合には、脳内出血による死亡リスクが高くなります。

くも膜下出血

脳の表面を直接おおっている軟膜と、その外側をおおっているくも膜の間には、脳脊髄液が循環しています。脳の血管が破れて、ここの部分に出血が起こった状態がくも膜下出血です。
脳の血管にできる脳動脈瘤の破裂が原因となることが最も多く、脳動脈瘤の大きさが直径4mm以上になると破裂しやすくなるといわれています。脳動脈瘤は、家族にくも膜下出血の病歴のある人がいると頻度が高くなりますが、遺伝性の病気ではありません。また、脳血管の奇形が原因となる場合もあります。

どんなときに起こりやすいか?

脳梗塞は夜間・早朝に起こりやすい。

脳梗塞には、起こりやすい時間帯や季節があります。
時間帯としては、睡眠時または起床時に起こるケースが多いようです。これは夜間は体内の水分が少なくなるために、血液が濃くなって血栓ができやすくなるためです。また、血液の水分量が減るということは、血液の量自体が減ってくることでもあります。血液量が減れば血圧が低下して、脳の血流量が減ります。そして、血流量が減少すると血流の勢いが低下し、それだけ血栓が血管に詰まりやすくなるのです。このようなパターンは、脳梗塞のなかでも、ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞でよく起こります。これらの脳梗塞を防ぐには、寝る前に1杯の水を飲んでおくことが、手軽な予防法です。
ただし、同じ脳梗塞でも、アテローム血栓性脳梗塞と心原性脳塞栓症の場合は異なります。心原性脳塞栓症は、心臓にできた血栓が脳の血管を詰まらせる病気ですが、仕事中や運動中など、体を動かした際に、心臓の血栓が血流にのって脳に流れ込むことがよくあるのです。
脳梗塞は、血液の粘りが強くなることが発症に大きく影響します。それだけに、体の水分が失われやすい夏場は、脳梗塞を起こしやすい季節といえます。こまめに水分を補給することが大切ですが、心不全の人は、水を飲みすぎると心臓に負担をかけることになります。水を飲む量については主治医に相談してください。
なお、寒い季節は安心かというと、そうともいえません。高血圧は、動脈硬化と並ぶ脳梗塞の原因であり、寒くなると血圧が上昇しやすいのです。

脳出血が起こりやすいのは日中の活動時

脳出血が起こりやすい時間帯は、午前一〇時ごろといわれています。この時間帯は1日のなかでも血圧が上昇し始めるので、急激に高まった血圧に、もろくなった血管が耐えきれなくなって破れてしまうためです。  
また、時間帯を問わず、血圧が急に高くなる状況も、脳出血では注意が必要です。東京都のある調査では、冬場、浴室で倒れ死亡するケースは、交通事故死よりも多かったそうです。浴室はふたを開けて湯気で暖めてから入る、脱衣場も暖房する、熱すぎる湯に入らない、長く湯につかるときには湯は胸の高さまでにする、素足が冷たいところに触れないようにする、出るときには上半身から拭いていく、といった配慮が必要です。また、排便時も血圧上昇によって脳出血が起こりやすいことがよく知られています。とくに寒い冬に、下半身をさらしてきばるのですから、血圧は自然と上がります。トイレの暖房や、便秘の予防を心がけることが、脳出血予防のポイントの一つです。
なお、くも膜下出血の場合は、とくに起こりやすい時間帯や季節はないようです。
突然の頭痛や手足のしびれが起きたら要注意!

脳卒中の典型的な症状とは

脳卒中の場合、出血や梗塞が脳のどの部位に生じたかによって細かな症状は異なってきます。ただ、おおまかにいえば、脳出血も脳梗塞も、あらわれる症状はそれほど違いがありません。つまり、突然の激しい頭痛や意識障害、体の左右どちらかの筋肉や感覚のマヒ、片側の目の急激な視力低下、吐きけ、嘔吐、ロレツが回らないといった症状です。
また、脳梗塞や脳出血では、ゆっくりした、しかし不規則な呼吸パターンがみられます。これは血腫などによって脳内の圧力が高くなり、周囲の脳組織が圧迫されて起こる脳ヘルニアによるものです。脳ヘルニアは、頭蓋内圧が非常に高くなると起こり、脳が下方に押しつけられてしまいます。脳の下の部分には、呼吸をはじめとした人体の生命維持をつかさどる脳幹があり、脳幹の下部に呼吸中枢があるため、異常な呼吸パターンが起こるのです。

症状が急に進む脳出血、段階的に進む脳梗塞

一般に、脳出血は突然起こり、約半数の人はひどい頭痛で始まります。また、吐きけ、嘔吐、けいれん発作、意識消失などが多くみられ、これらは数秒から数分以内に起こります。続いて筋力低下やマヒ、しびれ、失語、視力障害、錯乱などの神経症状があらわれ、これらも急速に悪化していきます。出血範囲が拡大すると、症状も悪化します。
一方、脳梗塞の場合は、左右どちらかの顔面と足に、突然筋力低下やマヒが起こるケースが多いようです。言葉のもつれや突然の錯乱、相手の話が理解できなくなる、片眼が急にぼやけたり視力がなくなる、平衡感覚と協調運動の消失にともなう転倒、突然の激しい頭痛、手足の知覚異常や感覚消失などがみられることも少なくありません。
脳出血と違うのは、症状が一気に悪化することは少なく、いったん症状が安定したのちに、再び悪化するという階段状に進行する点です。
一般的には、脳梗塞の多くは、発症直後に機能が最も大きく失われるのが普通ですが、約15~20%は病状が進行して1~2日後に脳の機能損失が最大になります。脳出血の場合は、機能は数分から数時間かけて継続的に失われていきます。

近くにいる人が脳卒中で倒れたら

脳卒中では、意識障害とともに呼吸障害をともなう場合が多くみられます。倒れた直後に注意しなければならないのは、吐物によって窒息することと吐物を誤飲することです。吐いた場合は、体のマヒした側を上に、顔を横にして誤飲を防ぎます。救急車が来る前には、頭部を後屈させて下あごを持ち上げ、口を開けさせて気道を確保します。枕はあごが下がり、舌根が沈下して窒息する危険性があるので用いません。
このような処置をして、患者さんはできるだけ早く専門の病院に運び、適切な治療を行なうことが大切です。
ふだんから血圧の高い患者さんに突然に起こる、上下肢における持続性で片側の脱力は、脳出血を含めた脳血管障害の可能性があるので、軽い場合でも神経内科、脳神経外科のある専門病院で精密検査をする必要があります。

脳卒中の前ぶれ症状に要注意

脳卒中は突然、発作が起こるケースが多いのが特徴です。しかし、発作の前に何らかの前ぶれ(前駆症状)があることも少なくありません。とくに脳梗塞の場合には、発作の前にしばしば前駆症状みられます。前駆症状は、脳卒中以外でも日常的によくみられる症状なのでつい見逃しがちですが、いち早く気づいて病院でみてもらえば、重い後遺症を残さずに治すこともできます。以下のような症状に気づいたら、念のために病院を受診するようにしましょう。

頭痛・吐きけ

頭痛はいろいろな原因で起こりますが、脳卒中で最もよくみられる症状でもあります。とくに、急に起きた頭痛で、ふだん経験したことのない強い痛みがある場合には要注意です。なお、脳卒中では、頭痛に吐きけや嘔吐をともなうことがよくあります。

しびれ・脱力感

顔あるいは片側の感覚がなくなる、あるいは力がぬけてしまうといった症状が急にみられた場合には、脳卒中をまず疑ってみる必要があります。何気なく手に持ったものを落としてしまう、なぜかふつうに歩けない、といったことで脱力やマヒに気づくことがよくあります。

めまい

めまいも日常的にみられることの多い症状で、吐きけや嘔吐をともなうことが多いものです。めまい全体に占める割合からいえば脳卒中はごく一部ですが、急にめまいが起きた場合には、脳卒中の可能性があります。とくに、手足のしびれや脱力感、物が二重に見えるなどの症状をともなう場合には、めまいの程度が軽くても要注意です。

意識を失う

急に目の前が真っ暗になって意識を失った場合には、脳と心臓の両方に原因がある可能性があります。脳に原因がある場合では、頸部や頭蓋内の太い血管が細くなったために起こることがあります。心臓に原因がある場合には不整脈が原因で起こる場合があります。

しゃべれない

うまくしゃべれなくなる言語障害も、脳卒中でよくみられる症状です。言語障害には二つの種類があります。一つは失語症といって、大脳の言語中枢の障害によるもの。話しかけられても理解できない場合(感覚性失語)と、思ったことを話せない場合(運動性失語)、そのどちらもできない場合があります。もう一つは構音障害で、舌や口の筋肉がマヒして、ロレツが回らなくなるものです。この場合は、言葉の内容や理解力には異常がありません。

物が二つに見える

片目をつぶって見た場合には何でもないのに、両目を開いて見ると、対象が二重に見える場合を複視といいます。目の病気や薬の副作用などでも起こりますが、急に生じた場合には、眼科的な病気よりは脳卒中など脳に原因がある場合が多いようです。

物が見えにくい

視野(視界)の半分が急に見えにくくなる視野障害や、急に片側の目が真っ暗になって見えなくなる(黒内障)場合には、脳卒中の可能性があります。視野障害の場合は大脳の視覚中枢の障害、黒内障の場合には大脳に酸素や栄養を供給している内頸動脈の一部に血流障害が起きていることが考えられます。

物忘れ・認知症

物忘れなどの認知症状も、脳卒中発作の前ぶれとして、しばしばみられます。数時間前のことが思い出せない、同じことを何度も繰り返し聞くといった症状があらわれたら、脳卒中の可能性を考えて、早めに病院で調べてもらいましょう。

画像診断によって診断技術が大きく進歩

最近は脳の検査法が非常に進歩して、脳卒中はCTやMRIを使うと早期に確実に診断ができるようになりました。脳卒中は、いかに早く治療を始められるかで、命を救えるか、あるいは後遺症をどれだけ少なくできるかが左右されます。その意味でも、画像検査による迅速・的確な診断が可能になったことは、大きな福音といえます。
脳卒中診断の中心になるのは、CTとMRIですが、この二つの画像検査には、それぞれの守備範囲があります。
脳梗塞の場合、発症して数時間以内の場合には、CTでは異常が映し出されないので、MRIが用いられます。CTに脳の障害部位があらわれるのは24時間たってからで、これ以降はMRIも行なわれますが、CTのほうが鮮明な画像がえられるため中心になります。
一方、脳出血やくも膜下出血では、CTが最も有用で、発症後数分以内に血腫が白く映し出されます。3~6時間で血腫が完成し、約1か月すると周囲の組織と同じ色になり、やがて脳組織より黒く映るようになります。脳動脈瘤、脳動静脈奇形、脳腫瘍による出血が疑われる場合は、脳血管撮影が必要です。
これらの検査のほか、腰椎穿刺で出血の有無、状況、部位などを調べることもあります。

更に詳しく知りたい方は次をご覧ください。
■脳梗塞や脳出血の治療>>
■脳梗塞や脳出血の予防>>

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