脳梗塞や脳出血の治療

目次

脳梗塞の治療法

脳梗塞を起こした人が病院に運ばれると、まず最初に呼吸、脈拍、血圧、体温を正常に戻すための治療が行なわれます。血圧が低い場合には輸液が、脈拍数が多すぎるときにはβ遮断剤などの薬で安定させます。脈拍数が遅すぎる場合には、ペースメーカーを埋め込むこともあります。また、発熱は、たとえ1~2度でも脳の損傷を急激に悪化させるため、発熱がある場合には、解熱剤などで熱を下げます。
脳梗塞が起こると、梗塞が起きた中心部分は、血管が完全に詰まって1時間くらいで脳細胞が死んでしまいますが、周辺部分は1~数時間はまだ生きています。そのため、早めに適切な治療を行ない、血栓を溶かして血流を回復させれば、機能を回復することも可能です。しかし治療開始が遅れると周囲の組織も徐々に壊死に陥り、1本の血管が詰まっただけなのに時間とともに梗塞は少しずつ大きくなっていきます。
また、血栓を溶かすといっても、詰まってすぐならよいのですが、3~4時間以上たってしまうと、詰まった血栓を溶かしたときに、壊死に陥った組織に大量の血液が入り込み、部分的に出血を起こすこともあります。 ですから脳梗塞ではなるべく早く、できれば発症して3時間以内に治療が開始できるよう、すぐに専門医のいる病院に患者さんを運ぶ必要があります。 発症したばかりの脳梗塞の治療は、内科的な薬物療法が主体になります。脳外科の手術が有効なのは、小脳に大きな梗塞がある場合や、大脳全体が梗塞のためにはれ上がって、生命の危険があるときです。  
治療薬には脳のむくみをとる抗脳浮腫剤、血栓溶解剤、抗血小板剤、血栓の再発を防ぐ抗血栓剤、脳保護剤などがあります。近年は、設備の整った専門病院で早期に治療を受けた場合、脳梗塞発作で亡くなる人は10%以下になっています。発作を起こした人の約45%は、完全に社会復帰しています。ただし、残念ながら、残りの人には何らかの後遺症が残り、重い場合には寝たきりになったり、車椅子の生活を余儀なくされたりすることもあります。
また、発症後1年以内に、10人に1人弱の割合で再発を起こします。再発すると後遺症がさらに強くなり、寝たきり状態や認知症などを引き起こす確率が高くなります。再発の予防には、高血圧や動脈硬化など原因となる病気をきちんと治療しておくことと、抗血小板剤を毎日服用することが基本になります。なお、心原性脳塞栓症の再発予防には、抗血小板剤よりも抗凝固剤などのほうが効果的とされています。

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脳梗塞の新しい薬物療法

脳梗塞の治療で、最近注目を集めているのがt-PA(組織プラスノミノーゲン活性化因子)という薬を用いたt-PA静注療法です。この薬を発症後3時間以内に投与すると、後遺症を大幅に軽減できるとされています。
この薬は血栓を溶かす血栓溶解剤と呼ばれる薬の一種です。脳梗塞の場合、血管をふさいだ血栓をいかに早く除去して、血液の流れを回復させるかが治療の成否を大きく左右します。血栓は、血液中のフィブリノゲン(線維素)が、いろいろな要因によって固形成分のフィブリン(線維)に変わることによって発生します。したがって、フィブリンを溶かすことができれば、血栓もなくなるわけです。
血液中にはプラスミンと呼ばれる成分が含まれていて、フィブリンを溶かす働きがあります。プラスミンはプラスミノーゲンと呼ばれる物質からつくられるので、プラスミノーゲンの働きを高める薬が開発されました。しかし、当初開発されたウロキナーゼやストレプトキナーゼという薬は、血栓そのものを溶かす作用が弱いうえに、大量に使うと、逆に出血しやすくなるという欠点がありました。このため、これらの薬剤を大量に使った脳梗塞治療では、脳出血を起こしたりして死亡する人が増えるという結果になり、脳梗塞に対する血栓溶解療法の試みは中止せざるを得ませんでした。
しかし、プラスミノーゲンの働きを高めて血栓を溶かすという方法は基本的に正しい試みであり、その後も研究が進められました。その結果、1980年代に第2世代の血栓溶解剤として開発されたのが、血栓を溶かす作用が高く、出血も起こしにくいt-PAなのです。当初は心筋梗塞の治療薬として用いられましたが、その後、米国や日本で脳梗塞の治療に大きな効果があることが証明され、日本では2005年10月に、脳梗塞の治療薬として承認されています。ただし、副作用による出血が完全になくなったわけではないので、この薬の使用については、発症後3時間以内の患者であることなど、いくつかの条件が設定されています。
なお、t-PA以外の新しい治療薬としては、脳保護剤に分類されるエダラボンという薬があります。脳梗塞が起こると、血液が送られなくなった脳細胞は、機能を停止した仮死状態に陥り、さらにそのまま血流が止まった状態でいると完全に死んでしまいます。仮死状態の間に血流を回復できれば障害を最小限で抑えることができるのですが、仮死状態の間にフリーラジカル(活性酸素)が発生し、周囲の脳細胞を破壊しつづけます。エダラボンは、このフリーラジカルの働きを抑えて脳細胞を守る作用があり、発症後、24時間以内に用いると効果が高いといわれています。

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脳出血の治療法

脳出血の治療は、血腫による脳の損傷を軽くし、再出血や血腫の増大を防ぎ、圧迫によって血腫の周囲の2次的変化が進まないようにすることが目的になります。このため内科的治療としては、頭蓋内圧亢進に対する抗脳浮腫剤の投与、血圧のコントロール、電解質のバランスの維持、合併症の予防と治療が基本になります。外科的治療が必要かどうかの検討も同時に行なわれます。血腫の増大は、発症してから数時間以内に約20%の患者さんにみられ、多くの場合は発症6時間以内に止まります。一方、脳浮腫は脳ヘルニアを起こして、予後に重大な影響を与えます。通常、脳浮腫は3日目から強くなり、ピークとなるのは1~2週間目ぐらいです。
脳出血の治療で最も重要なのは血圧のコントロールです。脳には、血圧の変動に対して、脳の血流を一定に保つ機能がありますが、脳出血が起きた当初はこの機能が働かないため、脳の血流は血圧の上がり下がりに合わせて変動します。
そのため、急に血圧を低下させると脳の血流量が減り、脳内を流れる血液の循環が悪くなるので、降圧剤を用いる場合には、薬の投与前の血圧の約80%を目標として血圧をコントロールします。一般には、降圧目標を収縮期血圧で160~170mmHg程度とするのがよいとされています。
脳出血の外科的治療は、頭蓋骨を開いて血腫を除去する方法と、特殊な器具を使って頭蓋骨の一部に孔をあけ、そこから血腫を吸引する方法(定位的血腫吸引術)があります。近年は、定位的血腫吸引術が行なわれるケースが増えています。
なお、脳出血では、いろいろな合併症が起こる可能性があります。なかでもけいれん発作や発熱、消化管出血、電解質異常、高血糖、下肢静脈血栓症などは、予後を大きく左右するので、それらに対する治療も重要なポイントです。

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くも膜下出血の治療

脳卒中全般にいえることですが、なかでもくも膜下出血では、発病直後に、いかに適切な処置が行なえるかが、病気の予後を大きく左右します。このため絶対安静にして救急車で脳神経外科に運び、手術が必要かどうかを早急に調べます。
くも膜下出血の原因で最も多いのは脳動脈瘤破裂ですが、現在では破裂した動脈瘤をクリップでとめる手術や血管内治療が行なわれ、成果を上げています。ただしこれは再出血防止が目的であり、破壊された脳組織が回復するわけではありません。脳の血管奇形が原因で出血が起きた場合には、奇形部分を摘出する手術や、ガンマナイフによる放射線治療が行なわれます。血圧のコントロールなどの全身管理も重要です。

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脳梗塞・脳出血