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Month: 2月 2019

りゅうえい健康通信―食養生 「腸の健康とプロバイオテクス」

「プロバイオテクス-体によい影響をあたえる微生物及び、その微生物を用いた食品」

”プロバイオテクス”なる語をしばしば目にするようになりました。体に良い影響を与える微生物及び、その微生物を用いた食品の意味だそうです。ヨーグルトはその代表ということで、ヨーグルトメーカーはこの語をキーワードとして病気予防に役立つ「機能性食品」を開発する方針です。この戦略は日本国の医療費節減の方針と合致するため、大いに期待をかけている分野のようです。

さて、微生物を生活に役立てることは、従来の日本では当たり前のことであったようです。かつて農業は「土づくり」を重んじました。自然が与えてくれたままの土地は、長く作物をつくり続けられないことを知っていたからでした。堆肥を土に施し、土を育てました。その堆肥は実は微生物の力によって、作物が吸収できる栄養分となっていたのです。その土には微生物の他にも、いろいろな土に生きる「生きもの」が集まり生活していました。肥えた土は、こうした「生きもの」達の合作でした。

こうした活動は木々の繁る森や山にも見ることができました。山で生じた栄養物は、川の流れに乗り海に出て、プランクトンの栄養源となり漁業を育みました。漁師は「海を守るには、山を守る」ということを知っていました。「はだかの山からは魚がとれない」のです。山々には魚がいないから当たり前?-そういう意味ではないのです。しかし、敗戦後、状況は一変しました。食料の増産を必要とする時代が来ました。アメリカ型の大量生産農業は、大量の化学肥料と大量の農薬を土に施しました。そして、土は死にました。土に生きる生きものが死んだからでした。土の再生が起こらなくなりました。農業の行き詰まりが始まったのです。現在、ヨーロッパでは、アメリカ型の農業から自然の力を利用する農業に変わりつつあるそうです。土に生きる生きものと、共存することの必要性が再認識されだしたのです。

ここで、人間はどのような具合か見てみましょう。私達の体で微生物と共存している部分は大腸です。大腸で生きる微生物は、食物の残渣を分解・代謝し、自己の増殖をはかります。代謝産物のうち、ビタミン類などの良き物は私達の体を支えます。悪いものが生じれば、体を衰えさせます。腸内微生物集団のあり方が体に支える影響は、「便秘」の影響を観察するとわかります。便秘の結果、悪玉菌の活動が高まると、皮膚には「吹き出物」が出て、「つや」がなくなってきます。悪玉菌の代謝産物が全身にまわるからです。ここで腸をきれいにしてみると、皮膚の状態が良くなってくるのがわかります。また、何かの都合で抗生物質を長期間飲み、腸の微生物集団が衰えると腸が不調となります。良い微生物集団を育てることが体にとって必要なのです。土と同じと言えます。私達も微生物と共に生きているのです。

各ヨーグルトメーカーは、今やプロバイオテクスという新しいネーミングの下に色々な機能性をうたう商品を開発する戦略です。新しいタイプの乳酸菌の開発はその現われです。さて、日本には、堆肥と同様、古くからのプロバイオテクスがあります。納豆、なれずし、くさや、みそ、しょうゆなどの発酵食品です。(そう、お酒も忘れてはいけませんね。)「なれずし」は東南アジア各地にみられる、民族の知恵として、伝えられてきている食品です。プロバイオテクスといわなくても従来、私達の身の回りには存在しているのです。

私達は「くさい!」と言って遠ざけるのではなく、こうした食品に再注目して、腸内微生物集団の改善育成をはかる方針をとってはいかがと提案する次第です。昔の土と同じように生き生きとした腸を育てるためです。

詳しく知りたい方は、スタッフにお尋ねください。

りゅうえい健康通信ー食養生「腸内微生物叢」

「腸内微生物叢を忘れては肥満は解消できない」

 

ヒトの腸内には多数、多種の微生物が棲息し、ヒトの生理機能に影響を及ぼしているという。これらの微生物は腸内で互いに影響を及びしあい、腸内生態系を形成しているとのことで、このことから「腸内微生物叢」とよばれています。一方、ヒトが摂取する食物(の性状)は逆に腸内微生物叢に影響し、あるものは有勢にあるものは劣勢にと差を生じさせ腸内微生物叢の性状に変化をもたらすそうです。プロバイオティクスと称し、腸内に生きたままでとどくヨーグルト・乳酸菌がテレビで宣伝され売れ行き良好なもの、この乳酸菌の働きで腸内環境を変化させヒトに有利にしようとする考えが理解をえていることによるでしょう。ワシントン大学の研究者による次のような調査があるようです。

 

A:無菌マウス(体表面も腸内にも細菌がいないマウス)にヒトの糞便から得た微生物群を腸内に導入して定着させる(腸内に先に定着した微生物群がいると後から入ってきた微生物群は定着しにくい)。このマウスに

高脂肪・高砂糖食を与えたグループ―Ⅰ郡

低脂肪食を与えたグループ―Ⅱ郡

の2組グループをつくり経過を観察したところ、Ⅰ郡のみ腸内微生物叢の急速な変化と体脂肪の増加がおきてきた。

B:無菌マウスに高脂肪食を与える。このマウスは高脂肪食と共に腸内に入る微生物群によって高脂肪食という環境下に棲息する腸内微生物叢が形成される。このマウスの糞便からの微生物叢を別の無菌マウスの腸内に導入して定着させる。これに低脂肪食を与え経過観察。AのⅡ郡の場合にはおきなかった体脂肪の蓄積がおきてきたのです。

 

Aの群(低脂肪食グループ)とB群(低脂肪食)とのちがいは腸内微生物叢のちがいです。AのⅠ群(高脂肪食+高砂糖食)とB群の共通点は高脂肪食に適合するように変化した腸内微生物叢です。微生物叢は多量の脂肪を分解することができるようになっており、その脂肪分解産物が体脂肪蓄積にまわる。この性状は低脂肪食によって微生物叢が変るまで維持されるというわけです。ですから、今まで高脂肪・高砂糖食を好み肥満となった人がダイエットをしても腸内微生物叢が変るまではなかなかその効果はあらわれないということになりそうです。腸内微生物叢は人に影響を与え、人は食物をとおして腸内微生物叢に影響を与える。腸内微生物については善玉菌・悪玉菌という言葉がありました。今は忘れられてしまったようですが、私達は毎日輩出する糞便の色・臭を頼りとして、腸内微生物叢への配慮を忘れてはいけないようです。

 

※原著はScience Translational Medicine 2009;1;6ra14

詳しく知りたい方は、スタッフにお尋ねください。

りゅうえい健康通信―食養生 「DHA」

「DHA(マグロの目玉)はどのように頭をよくするのだろう・・・」

一時、マグロの目玉が食材として話題をよびました。含有するところのDHAが頭のはたらきをよくするというのが理由でした。DHAはW-3系列の不飽和脂肪酸(注1)に分類される脂肪酸です。W-3系列不飽和脂肪酸を多く含むものはそのほかに青色の魚、亜麻仁油、くるみ、キーウィフルーツなどがあります。DHAが本当にいわれるような効果をあげるのか―オーストラリア、インドネシアでテストが行なわれています。

DHA88m+EPA22mgを1日量として6~12才の学童約4000人に6ヶ月と12ヶ月間服用してもらい、言語、学習、記憶に関する能力の変化を観察しました。一定の効果が認められました。同じようなテストはイギリスでも行なわれていて、同様の結果が観察されています。但し以上は、頭脳発達期の学童についてのものです。成人についての集団的なテストの報告はまだないようですが、W-3脂肪酸が不足している食事では集中力低下、失読症、認知症、うつ病、双極性障害、統合失調症になるリスクが増すとのことです。

DHAは脳神経細胞の相互接続(シナップス形成)によるネットワーク形成の促進、シナップス部位の膜流動性の増強などを通じて認識能力を高めるとともに、神経細胞内で発生する活性酵素の消去、ブドウ糖(エネルギー源)の利用率をあげ、ミトコンドリア(細胞内小器官―エネルギー生産担当)の働きを促進するなど代謝面にも寄与しているそうです。ヒトはDHAを体内で合成できないため、食から摂取する必要があります。ではDHAは脳内でどのように働くのでしょう…。

DHAは海馬(注3)(大脳辺縁系を構成する部位の一つ)における脳由来神経細胞栄養因子(BDNF)のレベルを上昇させると報告されています。BDNFは海馬と視床下部(これも大脳辺縁系を構成する部位)に最も多くあるといわれています。海馬は記憶、視床下部は代謝に関与します。一つの課題をこなすと海馬でのBDNFによるシナップス形成が増す、BDNFに関する遺伝子を除去すると記憶形成が障害される、BDNF遺伝子に関連する異常がヒトにもあり記憶形成の異常がある、などの報告があります。これらはBDNFが海馬の記憶形成にとって重要なものであることを示しています。

視床下部には視床下部メラノコルチン4受容体という受容体があります。エネルギーバランスをとる上で必須のものであると同時に、視床下部におけるBDNFの発現もコントロールしています。従って視床下部はエネルギー代謝とシナップス形成の両方に関与していることになります。BDNFにも受容体(TrkB)があります。ヒトでのTrkBの遺伝的変異は多食性肥満と同時に学習及び記憶の障害をあらわすと報告されています。DHAが属するW-3不飽和脂肪酸に対して、飽和脂肪酸及びトランス型(注3)脂肪酸は摂取量が多いとW-3脂肪酸とは逆の作用を認知能力に及ぼすとのことです。

齧歯類にいわゆる「ジャンク・フード」(特徴―飽和脂肪酸と砂糖の高含量)を3週間与えたところ認知能力の低下と海馬のBDNF関与のシナップス形成の減少が認められたそうです。これは食餌によりインスリン抵抗値が増したとか、肥満とかによるものではなく、食餌の神経細胞への直接作用であると理解されています。DHA或はジャンク・フードはBDNFに影響を与えていました。BDNFの変動により海馬、視床下部の機能は増減していました。この増減は単に海馬、視床下部に限局するわけではなく連絡する神経線維により、大脳辺縁系全体にひろがり更にこの系の外に拡大していきます。

海馬、視床下部のBDNFに影響を与えるものは脂肪酸類だけではありません。消化管機能をコントロールする迷走神経、消化に関係する臓器の分泌するホルモン、摂取カロリー過大過少なども同様に影響することが報告されています。こうしてみると健脳食というものの実体はある、それは食材と食事の仕方(特に楽しく食する)とからなるということになるのでしょうか…。

注1) 図1

 

 

 

 

 

図1は脂肪酸の構造です。炭素原子(c)が鎖状に結合、CとCの間の結合手が1本だけの結合からなるものが飽和脂肪酸、上図の場合のように結合手が2本である結合を含むものが不飽和脂肪酸

注2)   -C=C-部分に結合する水素原子(H)の配置には図2のように2通りあります。

各々

H H               H

-C=C- :シス型         -C=C- :トランス型

H

マーガリン:トランス型脂肪酸を含む、トランス型脂肪酸は天然脂質に水素を添加して脂肪酸をつくる時に生じる。ヒトはこれを代謝できない。

W-:図1のように、メチル基(-CH3)のCを1番として順次Cに番号をつける、C9とC10の間に二重結合があればW9族を系列化される。W-3はC3、C4間に二重結合。

 

図2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注2) 図3大脳辺縁系(太線内)

 

 

 

 

 

 

 

図:下記書籍より一部加筆等変更 ハーパー・生化学  丸善株式会社 解剖学アトラス  文光堂

 

文献:NATURE REVIEWS NEUROSCIENCE 568 JULY 2008 VOLUME9

詳しく知りたい方は、スタッフにお尋ねください。

りゅうえい健康通信―食養生 「赤いトマト、黄色いトマト」

「黄色いトマトと赤いトマト-黄色のトマトができました。」

品種改良によって、黄色いトマトができたそうです。通常、私達がみるトマトは赤です。トマトはリコピンで有名です。黄色のトマトにもリコピンが含まれていますが、このリコピンにちがいがあるため、色のちがいが生じているそうです。リコピンはΒ―カロテンの仲間で、このリコピンという名称もいくつかの類似構造をもつものの総称です。

(1)はΒ―カロテンの構造です。炭素原子が連なる鎖ですが、一つおきに二重結合があり、両端に同じ形のアクセサリー(構造物)がつきます。この両端のアクセサリーがなくなったものがリコピンですが、リコピンには(2),(3),(4),その他などのものがあります。大きくわけて一直線上のものと、途中で折れまがるものとになります。

 

(2)について、右から数えて5番目と6番目の炭素原子(C5,C6)に注目してみます。拡大するとC5,C6の間は二重結合で、C5に結合するC4,C6に結合すC7との間の結合手は、二重結合をはさんで互に反対側です。この結合をトランス型結合といいます。ので、(2)はトランス-リコピンと名がついています。

 

次に(3)ではC5,C6に結合するC4,C7夫々の結合手は二重結合をはさむことはなく、同じ側に位置します。これがシス型結合で、この構造を1つでももつのがシス・リコピンです。(4)では1ケ以上シス構造があります(わかりにくいかもしれませんが4ケあります)。

 

通常の赤いトマトに含まれるリコピンは90%以上がトランス型リコピンだそうです。一方黄色いトマトでは90%以上がシス型リコピンとのことです。このことが、赤であるのか、黄色であるのかをきめているのだそうです。生体利用効率という言葉があります。あるものを食した時、その生体により吸収され活用される効率のことです。いくら食材に含まれる量が多くとも体を「す通り」したのでは利用効率は「ゼロ」です。では今、私達が赤と黄色のトマト夫々を食したとします。生体利用効率にちがいがあるのでしょうか。赤より黄の方が利用効率は2倍以上高いそうです。シス型の方がトランス型よりも、生体利用効率はよいのです。

 

リコピンやΒ-カロテンはカロテノイドと総称されますが、カロテノイドは一般に、その吸収利用効率は調理法,―加熱とか油類を用いるかどうか或は、摂取法-油類と一緒にとるのかどうか、などの影響をうけるそうです。特に一不飽和脂肪酸を含む油(代表としてオリーブ油)と一緒にとると吸収がよくなるそうです。なおヒトの血液或組織中のリコピンは少なくとも50%がシス型だそうです。以上はU.S.Aオハイオ州立大学からの報告です。

 

文献:Journal of Agrioultural and Food Chemistry 2007;5S:1597-1603

構造図は上記文献より引用一部改変

詳しく知りたい方は、スタッフにお尋ねください。