顔を鏡に映して見る――皮膚がたるみ全体にしまりがなくなっている。老化したとわかる。が、「生きものが老化した」とわかる最も本質的な現象はというと、それは生殖能力の消失であるようです。「腎陽・腎陰の虚」という表現によって生殖能力の衰え及びこれに関連する現象をとらえる医学体系もあります。ヒトは無数の細胞から構成される多細胞生物ですから個全体が老化する時はこれを構成する細胞も老化していないわけはなかろうと推察できます。細胞は細胞分裂という現象をくりかえして増殖し次世代の細胞を生んでいきます。この細胞分裂は何回(=何世代)かくりかえされるとそれから先は分裂しなくなります。この細胞分裂をおこさなくなることを「細胞の老化」としています。

 

細胞分裂は何故おこらなくなるのか。細胞には核という遺伝情報(DNA)が集合している構造物があります。細胞が分裂する時期に入ってくると、核は形を変え複数の棒状の染色体という構造物になります。この染色体がついに2つに分裂し、2つの次世代の染色体となり核を形成し、次世代の細胞に分かれます。この棒状の染色体の先端には特別の配列をとるDNAがあり、テロメアと名づけられています。テロメアは細胞分裂がおこる度毎に少しずつ短くなり、この短縮分の修復がおこれば細胞分裂は続くのですが修復がおこらないと、あるところまでで細胞の分裂はおこらなくなります。テロメアの長さの短縮分をもとの長さにもどす働きをする酵素(テロメアーゼ)がありますが、この酵素は幹細胞、生殖細胞、免疫系の細胞、ガン細胞などでは活性が高いのですが私達の身体を構成する大部分の細胞ではその活性がないのです。―――従って時間の経過とともに、老化した顔が生じてくることになるのです。

 

体内でおこる酸化や炎症はテロメア長の短縮を促進したり、テロメアーゼの活動を抑制しますので、この状況をおこす肥満、インスリン抵抗性、メタボリック・シンドローム、慢性的な情緒上のストレスはテロメア長短縮の促進につながります。メタボリック・シンドローム(肥満、インスリン抵抗性が含まれる)、情緒ストレスをもたらす主な原因は私達の生活スタイルにあります。赤身の肉、加工肉、甘味のおかし類、フレンチフライ、精製穀粒などの食材或は食品、運動不足、慢性的な精神心理的ストレス―――これらは現今の私達の生活スタイルです。となると、この逆の生活スタイルが必要ということです。―――野菜食、全粒穀物、マメ類、魚、脂肪は全カロリーの10%、魚油(3g/1日)、ビタミンE(100国際単位/1日)、ビタミンC(2g/1日)、食物繊維、亜鉛、葉酸、セレニウム(200マイクログラム/1日)

 

筋肉を動かす運動(エアロビック運動);1日30分歩行週に6日

 

ヨガ、瞑想、呼吸法、ストレッチ、リラクゼイション;1日60分週に6日

 

これはなかなかに持続しにくい。ですが、これをみると従来いくつかの疫学調査で報告されてきた、病気にかかりにくくし天寿をまっとうする生活スタイルと一致するものです。健康で寿命をのばすと指摘されていた生活スタイルは細胞レベルでも同様に寿命をのばしていたのです。

 

文献

 

LANCET ONCOJOGY  Vol.9,November 2008,1048‐1057

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