「腸内微生物叢を忘れては肥満は解消できない」

 

ヒトの腸内には多数、多種の微生物が棲息し、ヒトの生理機能に影響を及ぼしているという。これらの微生物は腸内で互いに影響を及びしあい、腸内生態系を形成しているとのことで、このことから「腸内微生物叢」とよばれています。一方、ヒトが摂取する食物(の性状)は逆に腸内微生物叢に影響し、あるものは有勢にあるものは劣勢にと差を生じさせ腸内微生物叢の性状に変化をもたらすそうです。プロバイオティクスと称し、腸内に生きたままでとどくヨーグルト・乳酸菌がテレビで宣伝され売れ行き良好なもの、この乳酸菌の働きで腸内環境を変化させヒトに有利にしようとする考えが理解をえていることによるでしょう。ワシントン大学の研究者による次のような調査があるようです。

 

A:無菌マウス(体表面も腸内にも細菌がいないマウス)にヒトの糞便から得た微生物群を腸内に導入して定着させる(腸内に先に定着した微生物群がいると後から入ってきた微生物群は定着しにくい)。このマウスに

高脂肪・高砂糖食を与えたグループ―Ⅰ郡

低脂肪食を与えたグループ―Ⅱ郡

の2組グループをつくり経過を観察したところ、Ⅰ郡のみ腸内微生物叢の急速な変化と体脂肪の増加がおきてきた。

B:無菌マウスに高脂肪食を与える。このマウスは高脂肪食と共に腸内に入る微生物群によって高脂肪食という環境下に棲息する腸内微生物叢が形成される。このマウスの糞便からの微生物叢を別の無菌マウスの腸内に導入して定着させる。これに低脂肪食を与え経過観察。AのⅡ郡の場合にはおきなかった体脂肪の蓄積がおきてきたのです。

 

Aの群(低脂肪食グループ)とB群(低脂肪食)とのちがいは腸内微生物叢のちがいです。AのⅠ群(高脂肪食+高砂糖食)とB群の共通点は高脂肪食に適合するように変化した腸内微生物叢です。微生物叢は多量の脂肪を分解することができるようになっており、その脂肪分解産物が体脂肪蓄積にまわる。この性状は低脂肪食によって微生物叢が変るまで維持されるというわけです。ですから、今まで高脂肪・高砂糖食を好み肥満となった人がダイエットをしても腸内微生物叢が変るまではなかなかその効果はあらわれないということになりそうです。腸内微生物叢は人に影響を与え、人は食物をとおして腸内微生物叢に影響を与える。腸内微生物については善玉菌・悪玉菌という言葉がありました。今は忘れられてしまったようですが、私達は毎日輩出する糞便の色・臭を頼りとして、腸内微生物叢への配慮を忘れてはいけないようです。

 

※原著はScience Translational Medicine 2009;1;6ra14

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