「カルシウムサプリメントについて、ある国際シンポジウムでの意見」

ある国際シンポジウムで一つの報告がなされました。「骨を強化するためのカルシウムサプリメントの一つである炭酸カルシウムは、骨形成に必要なリンの吸収をさまたげる」という報告です。骨粗鬆症の治療をうけている人で1日当たり1,000~1,500ミリグラム(mg)のカルシウムを補強している場合、最大500ミリグラムのリンとカルシウムは結合する可能性がある。

米国では現在1日700ミリグラムのリンを食事からとることがすすめられているが、もし1,000~1,500ミリグラムのカルシウムを炭酸カルシウムでとっていると700ミリグラムのリンのうち500ミリグラムが吸収をさまたげられることになる。そこで一つの方法としては、カルシウム単独のサプリメントよりリンを含有するカルシウムサプリメントの方が望ましい。リン酸カルシウムの使用は一つの方法では?といった内容のものです。

以上の報告では炭酸カルシウムがどのようにしてリンの吸収阻害をするのかそのメカニズムについて何も語っていません。ところで現在慢性腎不全の方々は透析療法という治療を受けています。いわゆる人工腎臓で、自分の腎臓が働かなくなったため、そのかわりをさせるものです。これによって自分の体に不要になった物を体の外に出してしまうのですが、自分の腎臓のように極めて便利に働くわけではありません。私達の腎臓は不要なものを排出するだけではなく身体に必要なものは排出しない或は排出の量を調節するなど大変に微妙な働きをしています。

その例がカリウム(K)、カルシウム(Ca)、リン(P)などです。人工腎臓ではこれのものは当然排出するようにはなっていますが、透析は1日おきにやるものですから、次の透析までにはこれらのものは体内にたまってしまい、しばしば身体にとって安全な量をこえてしまいます。(本来身体に必要なものでも過ぎたるものはなんとやらの例です。)そこで体内に過剰にならない方法を考えるのです。

リンでは、リンは食物が腸で消化を受け吸収され血液中に出現します。腸から吸収されない方法は?食物中のリンは、リン単独では存在せずある物質を共同でつくりあげているメンバーとして存在します。腸で消化をうけた時、リンを含む物質が吸収されないことが必要です。透析ではここで、炭酸カルシウムを用います。リンを含む物質と炭酸カルシウムが結びつくことを期待してです。事実多くの場合、その効果がでます。効果の出ない人もいます。炭酸カルシウムは食直前、食事中、食直後に用いますがそれは食事と接触している必要があるからです。食事をすれば胃液がでます。そして胃酸も出ます。胃酸はつよい酸です。炭酸カルシウムはどうなるでしょうか。炭酸カルシウムの粉末を水にとかしてみます。粉末はそのままでとけません。これに「お酢」を入れてみます。細かい「泡」が出てとけます。そうです細かい泡は炭酸ガスです。炭酸カルシウム→〔炭酸〕と〔カルシウム〕とに分かれたのです。実際胃の中でも同じようなことがおきているのでは…。このカルシウムが腸の中で、カルシウムと結びつきやすいリンを含む物質と結合するとこのものは吸収されなくなる、という具合です。

胃酸の弱い人、カルシウムと結びつきにくいかたちのリンを含む物質を多く食べた場合、或は又、炭酸カルシウムの量に比べ食べた食物の量が多すぎる時、炭酸カルシウムを飲むタイミングがズレてしまった時等では、リンは吸収されてしまうのです。透析では、リンの吸収阻害効果がでず、血液中のカルシウムの量だけが上がってしまう場合もあります。炭酸カルシウムはこのままでは腸で吸収されませんので〔炭酸〕と分かれた〔カルシウム〕がリンを含む物質と結びつくことなく吸収されてしまった結果なのです。ここで先ほどの国際シンポジウムの報告を透析の経験則(?)からながめてみましょう。

(1)カルシウムサプリメントを飲むタイミング(食事との)はどうなっているのでしょうか。最大500ミリグラムのリンとカルシウムは結合する可能云々は多分、食事をしてすぐに飲んでいるのでは…?食間に服用したらどのような結果が得られるのでしょうか。

(2)リンを含むカルシウムサプリメントを用いる場合リン酸カルシウムは適しているか。リン酸カルシウムを水にとかしてみるととけない。そこで胃酸の成分である塩酸を入れてみると(少量)とける。炭酸カルシウムと似ている。塩酸でとけたとなると、リン酸カルシウム→(リン酸)と(カルシウム)に分かれた可能性が十分。この状態で食物中のリンを含む物質とカルシウムが結びついてしまうと腸にはいった時カルシウムは吸収されるのでしょうか。

現在、透析では炭酸カルシウムでリンの吸収阻害効果が不十分の時クエン酸カルシウムを用いる場合があります。クエン酸カルシウムは水にとけるのです。水にとけるものは、腸での吸収がよいのですが一方リンの吸収阻害効果もよいのです。透析ではリンの吸収阻害にカルシウムを用いるのですが、この時、効果をあげる一つのポイントは服用するタイミングです。タイミングがくるうとリンの吸収阻害が不十分となり一方血液中のカルシウムの量が上がってしまいます。

さていよいよ、まとめていきます。カルシウムサプリメントは食間にのむ。食事と離すことが必要なのです!そうすればリンの吸収阻害もおこりません。

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