「魚介類を食べよう!」

北極圏イヌイットの生活は電気がとおり、スノーモービルが走り、スーパーマーケットがある生活となり以前とは変わったようです。カリブー、魚介類、あざらし中心の食生活は、心筋梗塞を始めとする心血管系の病気が少なく、一方この集団の中からデンマーク都市部へ移住した人達は心筋梗塞での死亡率が増加したのでした。この事実から、魚油或いは魚油由来のn-3系不飽和脂肪酸という物質が注目されたのでした。日本では一時期、植物油或いは不飽和脂肪酸・リノール酸が動脈硬化予防に有効と宣伝されました。リノール酸はn-6系不飽和脂肪酸というグループに入る“あぶら”です。

脂肪酸というとなじみがありませんが、この物質は高脂血症などの血液検査項によく出てくる“中性脂肪”を作る成分です。

脂肪酸はグループの名前で、この中にいろいろな構造を持つものが所属しています。構造上、酸素と結びつきやすい不安定な位置を持つものを不飽和脂肪酸と名付け、不安定な位置の数(1ヶ、2ヶ、3ヶ…)によって一価、二価、三価…不飽和脂肪酸と呼びます(二価以上はまとめて多価と呼びます)。飽和脂肪酸は、酸素と結びつく不安定な位置を持たない脂肪酸です。飽和にしても、不飽和にしても体内で代謝され、次々とその構造が変わっていきます。二価の不飽和脂肪酸・リノール酸から出発して次々と代謝され六価の不飽和脂肪酸・アラキドン酸に至るルート上にある脂肪酸がn-6系、三価の不飽和脂肪酸・リノレン酸から五価の不飽和脂肪酸ドコサヘキサエン酸(DHA)に至るルート上にある脂肪酸がn-3系と呼ばれるものです。

体内でのn-6系、n-3系の役割はなんでしょうか。n-6系は血液を固まらせる、炎症を起こす等、出血、寄生虫や細菌の感染の時防御に必要な物質を作る原料として大切ですが、過剰に生産されると逆に動脈硬化、アレルギーの原因となります。n-3系は、こうしたn-6系に由来する物質の生産を抑える働きをします。

最近、魚油には精神安定作用―衝動的気分、抑うつ的気分を安定化させることがわかってきました。イタリアで心筋梗塞を起こした人1万人を対象に、n-3系脂肪酸毎日1g食した場合追跡調査したところ、食さなかったグループに比べて食したグループの心血管系の病気での死亡率は30%低かった、との報告があります。

地中海沿岸の民族はオリーブ油を多用してきましたが、一方地中海食として魚介類も多用したのでした。地中海の民の健康は、オリーブ油と共に魚油によっても支えられたということになります。

さて、日本の現在の1日平均的食事に含まれる脂肪酸については、n-6系12g、n-3系3gと言われています。n-6系リノール酸は必須栄養素(必須量3g以下)とみなされています。n-3/n-6(比):1/4、リノール酸の過剰です。n-3/n-6(比)が高い程虚血性心臓病など心血管系の病気、癌などで死亡する数が減少することがわかっています。“n-6系リノール酸を減らす、或いは魚油を増やしn-3/n-6(比)を4/1→2/1にせよ”と言われています。2、3日に1回は魚を食することが必要です。

魚は通常豚や牛の肉に比べて値段が高いので手が出しにくい、ハンバーガーで育ったがゆえに私達の舌は魚に馴染みにくいなど幾つかの理由がありますが、この際、脂肪酸の面から一度自分の食事を見直してみてはいかがでしょうか。

参考資料として、陸の代表として牛脂、オリーブ油、海の代表として鯨肉、マイワシの脂肪酸含有率を食品成分表から引用します。

 

全脂肪酸中の含有率
牛脂 オリーブ油 鯨肉 マイワシ
飽和脂肪酸 47.8 13.1 37.2 31.9
不飽和脂肪酸 一価 42.7 75.7 41.6 32.7
不飽和脂肪酸 多価 35.1 11.2 21.1 35.2
オレイン酸(一価) 41.5 75.0 30.7 13.0
リノール酸(二価)(n-6) 34.9 10.4 0.9 2.6
リノレン酸(三価)(n-3) 0.3 0.8 0.3 1.0
EPA(五価)(n-3) 1.5 13.0
DHA(五価)(n-3) 1.4 2.2

 

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